
solhaが選んだ香りの背景 アロマオイルの作り手を訪ねて
香りに出会う場所
秋の終わり 空気が澄んだ晴れの日
長野県上田市の山の斜面には紅葉がまだ残り
遠くの景色がやわらかな光に包まれていた
山の麓を抜け 開けた場所に現れたのは
手づくりの蒸留小屋
扉を開けた瞬間 ふわりと心がほどける香りに包まれた
「たぶん 建物に香りが沁み込んでいるんだと思いますよ」
蒸留家の橋詰さんは そう言ってやさしく笑う
木の壁や薪ストーブのぬくもり
山からの冷たい空気
それらが重なり合い この場所にしかない香りが生まれているのだろう



香りへと変わるとき
この日蒸留するのは
細かくチップ状にしたクロモジの幹15kg
大きな釜に入れ 水蒸気蒸留でゆっくりと香りを抽出していく
ぐつぐつと煮立つ釜から湯気が立ちのぼり
すっとした清らかな香りが混ざりはじめた
小屋の中にふんわりと蒸気が満ちていく心地よさに
思わず深呼吸をした
ゆっくり蒸留を続けること およそ1時間半
木に含まれていた香り成分が蒸気とともに運ばれ
冷やされて透明な液体へと姿を変えていく
木の香りが 液体となる
その“変化”が目の前で起きている
蒸留するものや植物の状態によって異なるが
この日得られた精油はわずか小さじ1杯程度
小さな滴が重なって生まれるたった数mlの香りは
その一滴一滴に
自然の時間と恵みが凝縮されていることを実感した



この香りに惹かれて
はじめてここの精油を嗅いだとき
その透明感と 自然そのままのような清らかな香りに
心がすっとほどけるような感覚があった
「この香りをつくる人にお願いしたい」
そう思い 何度もイメージを伝えながら試作を重ね
今回のブレンドアロマオイルが生まれた
完成したブレンドオイルの一部に
この上田の地で丁寧に蒸留された精油が使われている
そして何より 使われているのは精油100%のピュアオイルのみ
だからこそ感じられる 雑味のない澄んだ香り
余計なものがないからこそ すっと心に届くやさしさがある

自然と人との距離を縮める香りづくり
「香りのために木を切るのではなく
間伐で使われない木を活かしたいんです
香りづくりが 山のためにもなったらいいですよね」
そう語る橋詰さんの言葉には
自然への深い敬意が込められていた
香りをつくることは 自然を壊すのではなく
自然の営みに寄り添っていること
この場所で生まれる香りには
植物そのものの香りだけでなく
そんな想いも静かに宿っている

「香りは、人生 に余白をつくってくれるもの」
最後にこう話してくれた
「香りって なくても生きてはいけるものかもしれない
でもそこにあるだけで
その日の気分や 過ごす時間がやさしく変わる
少しの彩りと 少しの心のゆとりになれば嬉しいですね」
このアロマオイルもまた
日々の暮らしに少しの彩りと
心のゆとりをもたらしてくれる存在であれば嬉しい
植物が 水になり 香りとなり
誰かの時間に寄り添うものへと変わっていく
そのすべての過程に
自然への敬意と つくり手のやさしさが込められていた

aroma bloom ブレンドアロマの作り手

橋詰 凌
植物芳香蒸留士 /
長野県上田市塩田を拠点とする蒸留所・アロマブランド「HIPPOCAMPUS」を創設。
間伐材、地域の森林資源、栽培ハーブを用い、長野県の風景や季節のリズムを表現する精油やハーブティー、香りの空間デザインを手がけている。
5感を解放し、老若男女問わず誰もが楽しめる思い出に残る香りを。
A botanical distillation artisan.
Founder of HIPPOCAMPUS, a distillery and aroma brand based in Shioda, Ueda City, Nagano. Using thinned wood, local forest resources, and cultivated herbs, I create essential oils, herbal teas, and scent-based spatial designs that express the landscapes and seasonal rhythms of Nagano.
Crafting memorable fragrances that awaken the five senses, for people of all ages.