
aroma bloom 木片ディフューザーの背景 木を生かすひとりの作り手を訪ねて
森の中で見たはじまり
空気が透き通り 足音と木々の擦れ合う音だけが響く
ここは長野県飯綱町の森
「これを切りますね」
チェーンソーの音が森に響く
森を壊しているのではない
森を生かすために必要なこと


木片ディフューザー
アロマを垂らして香りを楽しむための
「木片ディフューザー」
ひとつひとつ手作業で作られている
その背景には 森で育まれた木の時間と
人の手が重ねてきた想いが静かに息づいている
間伐材として伐り出された木々に新たな役割を与え
暮らしの中へと届ける
そんなディフューザーを生み出す作り手と
その背景に広がる森の物語をたどる

自然をただ“守る”のではなく“活かす”
木片ディフューザーの作り手 寺島さん
建築を学び 設計の道を目指していた
だが 自然の中で過ごす時間が増えたことで その視点は変わる
出会ったのは林業の道
手入れされなければ 森は健全に育たない
放置された森は 豊かにはならない
生まれ育った地元の放置された森を知ったとき
「どうにかしたい…!」と思った
ほっとけば自然
けれど それは人の暮らしと切り離された自然
守るだけでは足りない
手を入れ 循環させ 活かしていく
そこに 人と自然が共に生きるための道がある



美しく歳を重ねる唐松
唐松は長野の山で身近な木
ねじれながら育つため 建材にはあまり向かないと言われる
けれど その木肌は時を重ねるごとに色味を変え
その表情は美しい
白く 赤く そして時間とともに飴色へと深みを増していく

木片のかたち
伐り出した枝を切り 面を整える
角を落とすことで ひとつずつ手の中で丸みを帯びていく
そうして生まれる木片は
ひとつとして同じ形をしていない
枝の跡 ゆがみ 節 どれも自個性
整いすぎたものではなく
自然のままの形にこそ価値がある
仕上がった木片の手ざわりは
木の温もりと 作り手の人柄が重なるようなやわらかさがあった




木に込める想い
「どこから来た木なのかわからないものって多いじゃないですか
だからこそ 飯綱の自分の山で採れた木だと知ってもらいたい
山に想いを馳せながら 使って欲しいです」
一本一本の木には物語がある
暮らしの中の小さな木片にも“想い”が宿る
手に取るたびに 森の空気が少しだけ近づく


木を流れの中に戻す
林業 大工 まちづくり
異なる仕事をつなぎながら 彼は言う
「山の資源をどう使い どう流していくか
木材の流れる道をつくりたいんです」
その言葉通り 森から暮らしへとつなぐ流れを描いていく
この木片ディフューザーは その流れの中にある


贈るのは香りだけではない
森の恵みを 暮らしのそばに
山の命を受け継ぎ 自然を活かすという想いのかたち
木の温もりを感じるたび 森とつながる
山の記憶をそっと運んでくれるだろう


寺島 陸斗
一般社団法人わけしょの理事として
「地域で若者が生きていける土壌づくり」に取り組みつつ、
個人では屋号・百水木社として
「水が山から流れるように百通りの木の流れを生み出す」ために活動中。
As a board member of a general incorporated association, I work to build a local ecosystem where young people can live and thrive.
Independently, under the name Hyakusui Mokusha, I create diverse, natural pathways—like water flowing from the mountains—generating a hundred streams of possibility.